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祝!読書感想文コンクール府知事賞受賞

2017.2.7

中学

イベント

2017年1月28日、青少年読書感想文京都府コンクールの表彰式が行われました。本校からは、中学1年生の後藤くんが京都府知事賞を受賞しました。京都府の中学校で最優秀の賞をいただき、校内でも多くの喜びの声が上がりました。
また、感想文の本文が2月4日付けの毎日新聞朝刊に掲載されました。

(以下、受賞本文)(読みやすさのため一部改行・空白を入れています)

「『寄りそ医』が与えてくれたもの」

それは突然のことだった。まだ元気でいてくれると思っていた。今年、水泳や学校のことなどで迷った時には、いつでもアドバイスをくれた曾祖母との、辛い別れがあった。最後まで在宅医療を希望した曾祖母だった。

「先生や看護婦さんが良くしてくれてねえ。」僕にも、何かできなかっただろうか。もっと寄り添えたよね、ごめんね、大おばあちゃん。僕は、この本のタイトルを見て、曾祖母が受けたであろう寄り添いの医療を思い浮かべ、反省の気持ちを込めてこの本を手に取った。曾祖母を失って暗い気持ちでさ迷っていた僕は、この本から、これからの生き方の道しるべとなる力強い一筋の光をもらえるとは想像もしなかった。

 医療崩壊とも言われる現代において、福井県の田舎の村で、地域の人々に寄り添い、絆を深め、地域医療に革命的な変化をもたらした一人の医師が書いたこの本は衝撃的だった。僕もどうしたら人のために動けるようになるのか。この医師の何がそうさせたのだろうか。

 まず驚いたのは、あきらめない屈強な心。著者が村に一人だけの医師として赴任したての頃、村では、僕の曾祖母のように「家で最期を迎えたい。」と望む高齢者がほとんどだった。しかし、著者は、医学だけでは家逝き看取り医療の限界を感じた。が、そこであきらめない。できないことは考えず、「どうしたらできるのか」を考えるという前向きな思考で、解決法を見つける。著者は保健・医療・福祉の連携を取れるように、様々なプロジェクトを展開し、保健医療福祉総合施設の建設や、村の改革に取り組んでいく。僕は、この「どうしたらできるのか」だけを考えるということが、できないことを悩んでいるより遥かに建設的で、パワーを生み出すものなのだと気づかされた。これからの人生、何か大きな壁にぶち当たってくじけそうになっても、なんとか前に進んでいけるように、僕はこの言葉を強く胸に刻もうと思った。

 しかし、屈強な心以上に感動したのは、人と人との絆。著者がこれらの改革を進める為の真の原動力となったのは、前向き思考だけではなかった。そこには、人と人との絆があった。あるとき著者は、クモ膜下出血という命に関わる病気の可能性を見落とし、誤診をしてしまう。著者は責められても当然と思い、患者の親族の方にお詫びをした時、
「こっちこそ、夜中に何度も呼び出して、悪かったなぁ。どんなに真剣にやっていても、間違えることは誰にでもある。お互い様や。」
という言葉が返ってきた。これが、著者にとって生涯忘れられない言葉となった、とあった。医師の誤診や手術ミスなどから、訴訟問題に発展することもある現代において、患者の親族が医師に深い信頼と感謝の言葉をかけることが、どれだけ医師を勇気づけることだろう。人と人との強い絆には、何事もはね返すほどの力強さがある。誰かが失敗した時、相手の非を責めずに、日頃からの尊敬と感謝の気持ちを伝え、落ちこんでいるだろうその人に元気づける言葉をかけることができたら、その人との絆がどんなに深められるだろう。
僕も、生涯忘れられない心の支えとなる言葉が自然と出るような、相手の立場に立って物事を考えられる温かい人間に成長していきたいと思った。

 そして、僕が一番感動したのは、著者の、周りの人々への感謝の念からくる謙虚な心。著者自身が過労で死の淵に立って入院すると、住民は著者の負担を減らすため、時間外診療を控えた。また、復帰後に診療時間が長引いて著者がヘトヘトのときは、患者さんから、励ましの言葉をかける。その時に著者が感じた謙虚な気持ちに僕は感動を覚えた。
「地域の人を支えているつもりだったのに、実は私自身が地域の人たちから支えられていた。」
この言葉こそが、もう単なる医者を越えた、「寄りそ医」であることの証だと思った。曾祖母の医療スタッフへの感謝の言葉も、きっとこんな寄りそ医に診てもらえたから出たのだろうと、僕は心から感謝の念でいっぱいになった。暗い海を泳いでいるような喪失感は消え、幸せそうに旅立った曾祖母の笑った顔が浮かんだ。

 この本は、僕に元気をくれた。人はひとりでは生きられない。そのことに気付けば、周りの人たちへの尊敬と感謝の念を持ち、自分も誰かのために役に立ちたいと思えて自然に行動できるのではないだろうか。僕は、その謙虚な姿勢こそが、人との絆を強め、未来の社会をよりよい方向へと導いてくれる最大の指針となると信じて生きていこうと思う。
頑張るよ、みていてね、大おばあちゃん。


(本の情報)
中村 伸一『寄りそ医 —支えあう住民と医師の物語—』(角川,2011)